人は糸を編み、糸は人をつなぐ。

NEWS

INTRODUCTION

Intro Main Image
yarn [jɑ́ːrn] ヤーン
【名】織物や編み物に用いる糸で、天然繊維や合成繊維を紡いだもの
【動】面白い冒険談をたっぷり話し、楽しませること
世界的なクラフト・ブームの中で生まれた、
編み物が生活に根ざしている北欧アイスランド発クラフト・アート・ドキュメンタリー
ひとつひとつ丁寧に作られた手しごとへの回帰やクラフト・フェアの活況など昨今の世界的なクラフト・ブームの中、YARN(糸)を紡ぎ、編み、表現する4組のアーティストが、彩り豊かな糸に人生を見出したパワフルな姿を描いたクラフト・アート・ドキュメンタリーが、編み物が生活に根ざしている国・北欧アイスランドで誕生した。
人は糸を編み、糸は人をつなぐ。編み物は「人とつながる」アート
「編むことは言葉であり、コミュニケーション」と全身ニット集団と街を闊歩するオレク、白い糸を人生のメタファーとして、超絶パフォーマンスを見せるサーカス・シルクール、ゲリラ的に街をニットで彩るヤーン・グラフィティでアイスランドから世界を旅するティナ、子供たちの想像力を刺激するカラフルなネットの遊具を世界中で作り続ける堀内紀子・・・アーティストたちの美しい手しごとやパフォーマンスは見る者を楽しませるだけでなく、編み物を手芸から「人とつながる」アートに昇華させようとする彼らの情熱と、信念を持って生きていく姿そのものが世界を彩り、私たちに生きる力を与えていく。
人生の歩みのように、ひと編みひと編み。糸と編み物の魅力を再発見
編み物は1人で黙々とセーターやマフラーを編むものという固定概念を打ち破り、街でヤーン・グラフティ(ヤーン・ボミング/ボンピング)を仕掛けたり、お喋りをしながらみんなで大きな作品を作ったり、自分の手を動かして外の世界や人とつながっていく、編み物の楽しさを再発見する。また、ひと編みひと編み、無心で続ける反復行動がヨガのように心を落ち着かせるのも魅力のひとつ。
糸の冒険をつなぐ、丁寧なアニメーションと語り
アーティストと共に旅する糸の冒険は、アイスランド、デンマーク、ドイツ、ポーランド、スペイン、イタリア、ハワイ、キューバ、カナダなどで2年をかけて撮影された。本作が長編デビューとなったのは、アニメーターとしても活躍するアイスランド人女性監督ウナ・ローレンツェン。女性たちが伝えてきた糸や編み物の文化を、オリジナルのアニメーションを混じえ、アーティストたちへのリスペクトを込めて丁寧に描いている。そして、各エピソードをゆるやかにつなぐのが、アメリカのベストセラー作家、バーバラ・キングソルヴァーの短編小説「始まるところ」。脚本を読んだ作家本人がナレーションにも参加し、詩的で心にじわりと沁み込んでくる珠玉の言葉が、羊や美しい自然の映像と共に、私たちを糸の世界へ誘っていく。

REVIEW

review Main Image
“編み物のエッジな魅力に気づかされた”
The Guardian
“消費文化に対して、興味深いよく考えられた一石を投じ、魅力的で面白い。オススメ!”
ELLE Magazine
“しなやかに、夢中になって行動する使命感への眩い賛歌”
Art New England
“編み物がアートだと証明した”
The Cut
“女性が自己表現する新しいメディアだ”
The Boston Globe

STORY

Story Main Image

「すべての始まりはもちろん羊と草」

祖母と曽祖母から編み物を習ったというティナは、かぎ針編みのニットでゲリラ的に街を彩るヤーン・グラフィティ・アーティスト。家の中におさまっている女性の手しごとを街に引っ張り出し、尖った灰色の街を優しく彩る。アイスランドを飛び出し、バルセロナでは海の女神に捧げるブイを編み込んで海に流し、キューバでは「人生万歳!」とカラフルなニットを壁に打ちつける。
ポーランド出身のオレクは、表現の自由を求めてアメリカへ。
「かぎ針編みは私の言葉であり、これでコミュニケーションをとるの」故郷の人々と一緒に機関車を編み込み、スパイダーマンさながらのパフォーマーが操るニットで彩られた人力車や全身ニットの集団と街を練り歩き、道行く人々を驚かせ、楽しませる独自のスタイルでアートの世界に切り込んでいく。
白い糸だけで構成された真っ白な舞台で「Knitting Peace」という公演を行うスウェーデンのコンテンポラリーサーカス、サーカス・シルクール。「糸は色んなものの象徴であり、自在に形を変え、人生のメタファーだ」とパフォーマーは語る。糸の上を歩き、命がけの練習を繰り返すパフォーマーたちの努力に人生の意味を見出させ、観客に投げかける。
長年テキスタイルの彫刻を作っていた堀内紀子は、心の空洞を感じるようになった。ある時、作品に子どもたちが飛び乗ったのを見て、「人のために作品を作る」ことを決意する。それ以来、未来を担う子どもたちの想像力を刺激し、子ども自身が工夫して遊び、子ども同士が自然と友達になってしまうカラフルなネットの遊具を、世界中で作り続けている。

TRAILER

ARTISTS

Artist Main Image
Olek オレク
Olek オレク

1978年ポーランド生まれ、2000年大学卒業後に、アメリカ・ニューヨークに渡る。ファッション、アート、クラフト、パブリックアートの垣根を越え、心体の複雑な相関性のメタファー、日常的な出来事、インスピレーションや希望を、伝統的なかぎ針編みの技法で、ヴィヴィットな糸を使って表現している。ブルックリンを拠点に、世界中のギャラリーや美術館、公共スペースで作品を発表。編み物をアートとして認めさせたいという強い想いを持ち、女性の権利や男女平等、表現の自由を、作品を通じてサポート。作品制作に留まらないアクティブな表現活動を続けている。
http://oleknyc.com/

Cirkus Cirkör (Tilde Björfors & Cirkus Cirkör) サーカス・シルクール
Cirkus Cirkör (Tilde Björfors & Cirkus Cirkör) サーカス・シルクール

ティルダ・ビョルフォスが、パリで出会ったコンテンポラリーサーカスの可能性に魅了され、数人のアーティストと共に1995年にスウェーデンで創立。世界中のステージやフェスティバルで20年間に200万人以上を動員し、2001年・2005年には日本でも公演を行なった。また、NPO団体として様々な教育的活動にも取り組んでおり、これまでに40万人の子供たちや若者に対して、コンテンポラリーサーカスの訓練や教育プログラムを実施してきている。スウェーデンでは、今やコンテンポラリーサーカスはアートとして認められており、幼稚園から大学、老人ホームなど様々な場所で出会うことができる。2018年10月、世田谷パブリックシアターにて最新作「limits」公演予定。
http://www.cirkor.se/

Tinna (Tinna Þórudóttir Þorvaldsdóttir) ティナ
Tinna (Tinna Þórudóttir Þorvaldsdóttir) ティナ

1981年アイスランド生まれ。幼い頃から曽祖母・祖母から編み物を習い、伝統的なアイスランドの編み物を継承してきた。2011年に、曽祖母の名前をつけたかぎ針編み物の本「Þóra - heklbók」を初めて出版。これまでの編み物の本になかったデザイン性の高さでベストセラーとなり、かぎ針編みアーティストとして認められるようになった。公共物を編み込むヤーン・グラフィティなどのアーティスト活動を続けながら、毎年1冊ずつ出版。アイスランドの伝統的な編み物に、劇中でも訪れているキューバ・ハバナで出会った色使いや模様を融合した独自の作品を作り続け、また編み物文化の継承のために、幅広い年齢層を対象にかぎ針編みを教えている。
https://www.instagram.com/tinnahekl/

堀内紀子 Toshiko Horiuchi (Toshiko Horiuchi MacAdam)
堀内紀子 Toshiko Horiuchi (Toshiko Horiuchi MacAdam)

1940年東京生まれ。64年多摩美術大学卒業後に渡米し、66年クランブルック・アカデミー・オブ・アート修士課程修了。インテリア・ファブリック・デザイナーとして勤務、大学で教鞭を取った後、70年に帰国。テキスタイル・アーテイストとして開いた展覧会をきっかけに、布の特質を分析し、布と人間の関わり合いに注目、子どもたちが遊んで大きなうねりとなることで完成する「集団ハンモック」のリサーチを始める。79年に国営沖縄記念公園にて、初めてハンモックの遊具を発表し、子供たちの人気を集める。89年に夫のチャールズ・マッカーダムの故郷、カナダ・ノバスコシア州ブリッジタウンに移住。国営昭和記念公園の仕事を始めるにあたって、90年に2人でインタープレイ・デザイン・アンド・マニファクチュアリング社を設立。その後、カナダで教鞭を取りつつ、多くの専門家と協力して世界各地で数々の作品を発表。カラフルなナイロンの糸で手編みされた遊具はメンテナンスされながら、長きに渡って、世界中の子どもたちの想像力を刺激し続けている。日本国内では、2010年こども環境学会賞デザイン賞・13年第7回キッズデザイン賞を受賞した彫刻の森美術館「ネットの森」(09)、札幌・国営滝野すずらん丘陵公園「虹の巣ドーム」(00-10)、富士山こどもの国「クモの巣ネット」(98)、山梨・豊富シルクの里公園「スペースネット」(94)、立川・国営昭和記念公園「虹のハンモック」(90)にて楽しむことができる。
http://netplayworks.com/

DIRECTOR

Director Main Image
監督:ウナ・ローレンツェン Una Lorenzen

カナダ・モントリール在住、アイスランド人映像作家・アニメーター。デンマークやアメリカで実験アニメーションを学んだ後、長編映画のアニメーションパートやミュージックビデオ、短編映画を制作し、世界各地の映画祭やアートイベントに参加。本作が満を持しての長編デビュー作。

監督:ウナ・ローレンツェン Una Lorenzen

DIRECTOR’s voice

YARN(糸)を映画の題材に選んだのはなぜですか?
母がレイキャビクの美術学校のテキスタイル科長だったこともあり、糸はいつも身近な表現手段として育ちました。そして、北欧の国らしく、たくさんの羊や毛糸と共に成長しました。ある時、テキスタイル・アートに関心を持つ人々が増えていることと、そこに私たちを変えていく力を感じました。そして、糸でものづくりをする多様なアーティストを見つけて観察し、映画の代弁者となって貰うことを決めました。糸の繊細でノスタルジックな面を、それが作り出す緊張感をもって示したかったのです。たくさんの糸にまつわるアーティストたちが、伝統的な手法からワイルドでびっくりするようなアプローチまで、男女共に世界を股にかけて活動していることがわかってワクワクしました。本作の中で私たちはどちらにも挑戦し、選んでいく人々の豊かさを表現し、小規模の作品から大きなインスタレーションまで、ひと編みひと編みの繰り返しが、本当に世界を明るくしていくものだと思っています。本作は終わりなき糸の可能性、心地良くてポジティブ、カラフルで詩的に探求する糸についての映画です。
最近のクラフト・ブームに対してどう思いますか?
テキスタイル・アートの最初のブームは1960年代、第2次フェミニズムブームもあって、ヨーロッパ中の美術学校でテキスタイル科が設立されました。しかし、アートとして一般化されませんでした。糸は文字通り私たちの身近にあって、当たり前すぎたのです。昨今のニットやかぎ針編みのアーティストたちのムーブメントは、間違いなく本作を制作するきっかけとなりました。本作が、糸に関わりのない人たちを刺激し、また、糸に関わる人たちがより多くの可能性を探求し、家にあるウールのセーターだけでない編み物の魅力をもっと知りたいと思う人たちとつながっていくことを願っています。
4組のアーティストを選んだ理由は?
世界中から、男女ともに様々なアーティストを探しました。選んだ4組に共通するのは、環境と相互に関係し合い、建築やストリート、自然の一部となる作品を自分自身の手で作り出していて、言うまでもなく、人とつながっていることです。それぞれ重要で異なるエネルギーを、独自の多様な角度で、糸に注いでいる彼ら全員をリスペクトしています。特に、長いキャリアのあるテキスタイル・アーティストのTOSHIKO(堀内紀子)が、ユニークで素晴らしい、人々に必要とされるアートに形を変えていった軌跡は、本作に表現することの変遷に深い洞察を与えるものでした。しかし、それは映画の作り手が押しつけるものではなく、映画を観る人それぞれがアーティストたちに引きつけられ、観客と1人もしくはそれ以上のアーティストたちに、それぞれのつながりを見ることができたら、何より嬉しいことです。

CAST & STAFF

Cast Main Image
CAST
オレク
サーカス・シルクール
ティナ
堀内紀子
STAFF
監督:ウナ・ローレンツェン
脚本:クリスチャン・アロラ
ナレーション:バーバラ・キングソルヴァー「始まるところ」
撮影:イガ・ミクラー
編集:ソールン・ハフスタズ
音楽:オルン・エルドゥヤルン
製作:ヘザー・ミラード/ソルズル・ヨンソン

THEATERS

Theaters Main Image
Topへ